Rin'sPage 函館&佐藤泰志

2002年佐藤泰志を知るも本が絶版で、2005年まで函館に通い佐藤泰志探求をした*りん* (東京在住)のブログ。更新情報はツイッター @rinspage1 にUPします。

福間健二氏 渾身の作「佐藤泰志 そこに彼はいた」 を読んだ

 

福間健二氏が書いた佐藤泰志 そこに彼はいた」を読み終えました。400頁を超える力作で、あまりにも深い内容でした。今日はこの本を読み、感じたことを書きます。青字は全てこの本からの引用です。

 

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佐藤泰志について一冊の本を書く。何度やってもうまく行かず、途中で投げ出してきた。

 

上記は本のあとがきに書かれた文だ。福間氏は、投げ出しながらも、最後までやり遂げた。どれだけの苦しみが伴ったか、思い出したくない悲しみを掘り起こす作業に途方にくれた日もあっただろう、日々に忙殺され情熱が失せた事もあるだろう、しかし、何度も心を奮い立たせ本を完成させたことに、まず拍手を送りたい。

 

佐藤泰志の死後、長い時間を経た後の出版だが、福間氏は彼を早世の作家として美化していない。未刊行の作品含む全作を丹念に読み、どうやっても言い分が見いだせない作品が一作だけあることや、男としての彼のズルさを見たことも書いている。また福間氏自身の失敗・後悔も綴っている。この正直さに私は好感を覚えた。

 

佐藤泰志は閃光の走るような速さで私の心をつかんだのだ。

 

絶交期間も含めて、私たちはずっと友だちだったと思う。とくにこの再会直後の時期は、よく会い、連絡しあい、いつでも相手がいま何をしているか知っているほどだった。

 

佐藤泰志に絶交癖があった事は有名だが、福間氏も五年もの長く辛い絶交を経験している。この本では絶交にいたる経緯が書かれており、どのような心の動きで佐藤泰志が絶交を決意するのか、垣間見れた気がした。それにしても、この二人の惹かれあい方は尋常ではない。絶交期間もお互いが思いあっているように感じる。ここまでの友人関係を築けることを、私はうらやましく思う。

 

世の中も人とのつきあいも、曖昧にしておいた方が楽なことがほとんどだが、曖昧を放置できない佐藤泰志とのつきあいは、神経をすり減らすことが多かったろうと思う。しかし、楽しかったことも綴られている。

 

佐藤泰志はマンガが好きで、ときどきマンガの人物みたいになった。機嫌のいいときだ。存在としての危うさを一気に逆転するような、そのユーモアに接して、涙がでるほと笑ったこともある。

 

佐藤泰志作品を読むだけでは、知ることのできない、彼の明るい一面を、この本から知ることができた。マンガの人物のようなユーモア溢れる佐藤泰志を、見てみたかったと思うが、きっと本当に心を許した友人にしか見せない一面で、映像でも残ってはいないだろう。

 

悪魔の手を借りても佐藤泰志という宿題を卒業したいと思ってきた。そういう二十四年だったかもしれない。卒業はまだできていない。できなくていいのだ。

 

あとがきはこの文で終わる。この本がでてから二年。現在公開中の映画オーバーフェンスのパンフレットにも福間氏は「人間佐藤泰志」を書いている。力作を完成させても、佐藤泰志から卒業せず、伝え続ける姿勢に頭が下がる。

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