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Rin'sPage 函館&佐藤泰志

2002年佐藤泰志を知るも本が絶版で、2005年まで函館に通い佐藤泰志探求をした*りん* (東京在住)のブログ。更新情報はツイッター @rinspage1 にUPします。

オーバーフェンス以外の 職業訓練の物語 (海炭市叙景)

佐藤泰志は32歳の頃、東京から故郷函館に戻り、職業訓練校にて大工になるための訓練をしています。この体験が小説「オーバーフェンス」のモチーフとなり、映画では訓練校の個性豊かな人々を活き活きと描いていました。客席からどっと笑いが起こるユニークなシーンもあり、心が和みました。

 

実は他にも訓練校の人を主人公にした作品があります。今日は訓練校に通う初老の男の物語、海炭市叙景 第二章「まっとうな男」をご紹介します。(青字は「まっとうな男」より引用)

 

寛二が籍を置く建築科では、一九三七年生れの彼が一番の年長者だった。(中略)口うるさい舎監でさえ、彼より十四歳も齢下だ。

 

JRの駅で四つめの、人口一万人の矢不来(やぶらい)の町まで、あと一時間もすれば着くだろう。

 

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この物語を読み、2003年車で矢不来を通ってみました。

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海炭市叙景は架空の地方都市が舞台ですが、時々実在の地名がでてきます。矢不来は函館駅から車で40分ほどの小さな町。JRの駅はなく、函館駅へバスはありますが一日にほんの数本のようです。

 

矢不来から海越しに函館山が見えます

(この後ネタバレ含 未読の人は注意!)

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矢不来へ戻れば戻ったで、職業はなく、仕方なく海炭市の外れにある職業訓練校に入った。週に一度、はめを外しに矢不来に帰るのだ。

 

男は矢不来に帰る途中、飲酒運転で捕まり、警官の理解できない理屈を話し始めます。自分を「まっとうな男」と思っていたのは彼自身だけで、周りは誰も彼をまっとうとは思っていない事が、暴かれていきます。

 

映画オーバーフェンスでも白岩が

「俺はさ・・・普通に働いて、普通に結婚して、子供つくって・・・そういう人間だと思ってたんだけど・・・ぜんぜん違ったんだよ」

と言っていました。(シナリオから引用)

どちらの作品からも、普通って何?というメッセージと、訓練校というコミュニティの中で、様々な年代の人を丁寧に見つめていた、佐藤泰志の鋭くも優しい観察眼を感じました。

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矢不来から車で15分程走ると「トラピスト修道院」があります。

 

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ポプラ並木が見事。紅葉したら綺麗でしょうね。

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2003年冬に訪れた時は美しい銀世界が広がっていました。売店のソフトクリームは濃厚で美味しい!今も販売しているようです。

 

函館からトラピスト修道院へ行く途中に矢不来はあります。矢不来に何があるという訳ではありませんが、海炭市叙景を読んで「ここが矢不来かぁ」と思いをはせながら、絶景228号線を海沿いドライブしてはいかがでしょう。